ジョブズに学ぶ、半径5Mのものづくり
まず「自分たち」を想像して、ものをつくった。
■iPhone開発でもいかされたユーザー視点
こうした「ユーザー視点」はiPhоneの開発でもいかんなく発揮されています。キーボードもスタイラスペンも嫌いなジョブズはタッチ機能付きのディスプレイをつくるように指示し、オン・オフスイッチの代わりにスワイプ起動を採用、さらには携帯電話につける「ボタンは1個だけだ」を譲ることはありませんでした。
いずれも大変な難題でしたが、難題を解決してみると、多くのユーザーが「これを使ったら後戻りはできないね」と感じるほどの製品になるというのがジョブズのものづくりです。結果、iPhоneは世界的大ヒットとなり、そこからアップルはiPhоneの改良を重ねながら時価総額世界一企業へと急成長することになりますが、それを可能にしたのはジョブズの圧倒的なものづくりであり、アップルの製品を心底大好きなたくさんのユーザーだったのです。
マッキントッシュを開発していた頃、ジョブズは「アップルをどうしたいか?」と質問され、こう答えています。
「魂(ソウル)を持ち合わせた100億ドル企業にしたい」
そして今、時価総額1000億ドルも視野に入っているアップルには「魂を持ち合わせた1000億ドル企業」であって欲しいというのがアップル製品のユーザーたちの願いなのかもしれません。
参考文献 『スティーブ・ジョブズ偶像復活』(ジェフリー・S・ヤング、ウィリアム・L・サイモン著、井口耕二訳、東洋経済新報社)、『スティーブ・ジョブズ』Ⅱ(ウォルター・アイザックソン著、井口耕二訳、講談社)、『ジョブズ・ウェイ』(ジェイ・エリオット、ウィリアム・L・サイモン著、中山宥訳、ソフトバンククリエイティブ)、『iPоdは何を変えたのか?』(スティーヴン・レヴィ著、上浦倫人訳、ソフトバンククリエイティブ)